皆さんもご存知の通り、第81回米アカデミー賞 外国語映画賞を受賞した「納棺師」という職業を広く一般に知られることとなった映画「おくりびと」です。
以下ネタバレです。
実はずいぶん前に観ていたのですが、自分の中で消化できず今になってしまいました。
納棺師という仕事は素晴らしい仕事ですし、映画も感動的で涙なくしては見られませんでした。
特に山崎努さんの演技は素晴らしく、この方なくしては成り立たない映画ですし、本木雅弘さんの身のこなしは優雅で、自分の死後、こんなにプライドを持って納棺していただけたらどれだけ素晴らしい旅立ちになるか、と心から思うのです。
けれども・・・ネックはここからです。
映画の中では、オーケストラのチェロ奏者だった夫が楽団の解散により、田舎へ戻りひょんなことから納棺師になるのですが、この妻がね〜最悪なんです。
妻に黙って夫は納棺師の仕事をしていたのですが、仕事がバレた途端、「けがらわしい」と言い放ち、実家に帰ると言いだし、それっきり。
おまけにここからが最悪で、なしのつぶてでいた妻が妊娠発覚と同時にのこのこ戻ってきていきなり夫にむかって「子供に堂々と言えないような仕事は辞めてくれ」、というような大暴言を吐き捨てる始末。
このあたりで一気に感動は冷め、くらくらしてしまいました。
(じゃあ法医学者だったらよかったのかしら???なんてイジワルな考えまで浮かんでしまったわ:(爆))
確かに、田舎という土地柄、死を忌み嫌う方は多いでしょうし、これは一般的な人々の反応なのかもしれません。
けれども、妻がですよ、夫の一番の理解者であるべき人間があり得ません。
仮にも自分が愛する人間が、なんでこの職に就いたのだろうか、とか決して楽でないこの仕事を続けていくということにはどんな理由があるんだろうとか、想像力があれば分かるはずです。きちんと訊ねて話し合うことだってできたはずですよね。
正直、どれだけ夫を傷つけているかを全く想像できず、その仕事の内容もよくわかっていないのに頭ごなしに否定とは・・・。(涙)
まあ、ここで血圧がだいぶ上がってしまったのですが、(とはいえ映画ですから、焦点がぶれてしまうので、ここまで熱く思ってしまう私もどうかと思いますけど(苦笑))最後は彼の仕事ぶりを目の当たりにした妻は理解してくれるのですが・・・。
ある意味お互いに言葉が足りない未熟な夫婦が本当に理解し合うことができてハッピーエンドなのですが、個人的には偏見とご都合主義と想像力の無さが心地悪く、もやもやする映画でした。
この映画を何で見たのだろう?ということを考えると、きっと私の中にも何か凝り固まった偏見があるために、その「おしるし」なのかもしれないと思いなおし、襟を正した次第でした。
職の貴賎は一切ありません。どれくらい真摯にプライドを持ってその仕事に臨んでいるか、それだけです。
当たり前のことなのに、私たちの目はごく身近な人にまで「どう見られるか」ということで思い悩み、濁ってしまっているのかもしれません。
あと、皆さんはご存知と思いますが、死は忌み嫌うものではなく現世の卒業でしかないですからね〜。納棺師は素晴らしい「卒業」のお手伝いですね。